「お金」よりも前に、一人ひとりの「動く理由」を丁寧に

2026.03.19

「お金」よりも前に、一人ひとりの「動く理由」を丁寧に

事例:のまま~空き家を動かすプロジェクト~

この取材は、令和7年度独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業の採択を受け実施しています。

「ありのまま・いのまま・おもいのまま」に空き家を未来へつなぐことを掲げ、東京都奥多摩町で空き家の利活用に取り組むプロジェクト「のまま」。

その中心メンバーのおひとり、梅原颯大(うめばら・はやと)さんにお話をうかがいました。


その状況を何とかしようと、2025年秋に「のまま」は立ち上がりました。

中心メンバーは奥多摩で地域課題解決に取り組む建築家の丸谷晴道さんと、山梨県丹波山村で「梅鉢不動産」を経営し、人口500人の村で空き家の利活用事業を進めてきた梅原さん。

そこに“まち磨き”の実践者・大井智幸さん、空き家の思い出を未来へ残す「お守りBOOK」主宰の鈴木さとみさんが加わり、チームとして歩み始めました。


梅原さんが協力アカデミーのセミナーに参加したのは、「のまま」の活動が動き出した頃。協力アカデミーの動画を見て、「活動に生かせそう」と思ったことがきっかけでした。

そこで出会った「相利評価表」や「協力モデルキャンバスpro版」は大きな気づきをもたらしたと言います。

これまで参加したプロジェクトマネジメント研修では組織図やガントチャートなどを作るノウハウは学びましたが、今回は、それよりも前の段階で、そもそもどういう人を巻き込む必要があるのか、相手の利益は何かをまず考える重要性を改めて学んだとのこと。

「不動産の世界では、金銭を払って依頼をすれば人は動いてくれます。でも『のまま』の活動も、地域住民の方が動く理由も、お金では説明できない部分が大きいんです」と梅原さん。

空き家に対する不安、地域を良くしたい気持ち、困っている人を助けたい思い、こうした「動く理由(=相利)」を丁寧に整理して、それぞれがどんな関わり方ができるのかをシートに落とし込んだことで、地域の人々との関係性がクリアになっていきました。

課題は感じていても、「何をすればいいかわからない」、「動き方がわからない」という人は多い。そういう人たちに対し、それぞれの「相利」と「役割」を示すことで、みんなが動きやすくなります。

その結果、「のまま」は広報活動をほとんど行っていないにも関わらず、住民からの相談が集まるようになりました。回覧板に活動開始を告知すると5件の相談が寄せられ、活動開始から5か月ほどで2軒の活用が決まりました。

「こんなに反響があるとは思わなかった」と梅原さんは振り返ります。


奥多摩には推定500軒の空き家があると言われています。もしこれらが活用されれば、新生活の拠点を探す移住希望者、空き家で事業を始めたい人、地域を元気にしたい住民、それぞれの思いが形になり、奥多摩全体の賑わいにもつながります。

今後は、地域住民から多くの空き家情報を寄せてもらえるよう「のまま」の認知度を上げるとともに、社会福祉協議会とつながって空き家相談会などを開いていきたいとのこと。

「今の世の中、いろいろな人を巻き込んでいかないと事業は動きません。そのとき、『相利評価表』や『協力モデルキャンバス』は、誰と何を進めるのかを整理する上で本当に役に立ちます。営利・非営利問わずですが、特に営利セクターの人にこそ知ってほしい!」と梅原さん。

多様な人と協働して何かを動かしたいすべての人に、この「相利」の考え方はヒントになるはずです。


団体名
のまま~空き家を動かすプロジェクト~

代表者
丸谷 晴道(まるや・はるみち)

東京から移住し、設計経験を生かした地域活動を展開。奥多摩町を拠点に、古民家を中心とした空き家活用や宿泊事業、人と人をつなぐまちづくりを進める〈グラディジョン合同会社〉を設立。町内での古民家活用を推進し、空き家プロジェクトにも腰を据えて取り組んでいます。

事業内容

「のまま」は、奥多摩周辺の空き家の困りごとをまとめて相談できる窓口です。
片付け・相続や名義のこと・売る/貸す/活かすまで、状況に合わせて一緒に進めます。
「現状のままでも」対応できるのが特徴です。

活動エリア
東京都西多摩郡奥多摩町

利用前の課題
・移住希望者からの問い合わせや空き家はあるにも関わらず、貸せる家・売れる家がほとんどない
・地域の人が課題を感じていても、何をすればいいか、どう動けばいいかわからない
・地域住民が動く理由がお金だけでは整理できず、関わり方が見えにくい

利用サービス
独立行政法人福祉医療機構(WAM)『令和7年度 社会福祉振興助成事業〈通常助成事業〉「中間支援組織による福祉NPOの多主体連携支援スキルの開発普及事業』

利用後の成果
・関係者それぞれの「相利」と「役割」が明確になった
・地域の人々との関係性が整理され、みんなが動きやすくなった
・広報活動をほとんど行わなくても、住民から相談が集まるようになった
・回覧板での告知により5件の相談が寄せられた
・活動開始から5か月ほどで2軒の活用が決まった

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