2026.01.23
【活動報告】担い手不足は設計で解決できる——諫早市社会福祉大会で語った「相利開発」という考え方
1月22日(木)諫早市社会福祉協議会主催「第20回諫早市社会福祉大会」
NPO法人協力アカデミーの松原です。
今日(1月22日)は、長崎県諫早市へ。
諫早市社会福祉協議会主催の「第20回諫早市社会福祉大会」でゲスト講演を行いました。
参加者は約400名。地域福祉に関わる多くの方々が集まる大きな場でした。
講演タイトルは「担い手不足をどう乗り越える?協力の輪の広げ方」です。

長崎市市民活動センター「ランタナ」の関根さんには、送迎と写真撮影で大変お世話になりました。
ありがとうございました。
協力のキモは「相利開発」
今回の講演で最もお伝えしたかったのは、「協力のキモは相利開発である」という点です。

相利とは、協力に参加する人たちが、それぞれ自分に合った利益を得られる状態のことです。
今の時代、人々の価値観や立場、利害関心は多様化しています。そのような状況では、「同じ目的だから一緒にやろう」というだけでは協力は生まれにくくなっています。
だからこそ、それぞれが求めるものの違いを前提にし、その違いを活かしながら、みんなにとってメリットのある形で活動を設計する必要があります。
これが「相利開発」という考え方です。
担い手不足の本当の原因
担い手不足は、少子高齢化や人口減少の問題だとよく言われます。
しかし実際には、「社会の役に立ちたい」と考えている人は66%にのぼる一方で、実際にボランティア活動をしている人は1~2割にとどまっています。
つまり、「やりたい人はいるのに、参加していない」という構造があるのです。

その原因は、団体側と参加者側の「意識のズレ」にあります。
団体側は、「社会課題を解決する」「社会貢献につながる」といった“良いこと”を前面に出し、デジタル化や課題解決型の活動を進めようとします。しかしこれは、あくまで推進側の論理です。
一方、参加する側は、「自分にどんなメリットがあるのか」「負担はどのくらいか」「入りやすいか」といった視点で判断しています。このズレが埋まらない限り、担い手不足は解消されません。
地域猫活動に見る相利の仕組み
このズレを埋める具体例として紹介したのが、地域猫活動です。
野良猫問題には、関わる人ごとに異なる困りごとがあります。
猫が好きな人は「猫がかわいそう」と感じ、住民は「糞尿被害で困っている」、町内会長は「トラブルを減らしたい」、自治体は「殺処分を減らしたい」と考えています。
地域猫活動では、これらすべての困りごとを同時に解決できる仕組みをつくりました。
その結果、それぞれが自分の目的を達成するために協力するようになります。
猫好きは猫を助けられ、住民は被害が減り、町内会長はトラブルが減り、自治体は政策目標を達成できる。
結果、このように、「みんながそれぞれ自分のために協力する状態」が相利です。
協力は「お願い」ではなく「提案」
重要なのは、協力を「お願い」するのではなく「提案」することです。
「この活動を一緒にすれば、あなたの困りごとが解決します」
そう提案できるかどうかが、協力関係をつくる分かれ目になります。
そのためには、相手が何に困っていて、何を実現したいのかを理解することが不可欠です。これができれば、無理に巻き込む必要はなくなり、相手は自分の利益のために自然と参加するようになります。
まずは「4つのコスト」を下げる
相利の設計がすぐに難しい場合は、まず参加のハードルを下げることから始めます。
具体的には、次の4つのコストを下げることです。
・負担感(仕事を小さく分ける)
・無理強い感(断れる仕組みをつくる)
・不公正感(ルールを明確にする)
・入りにくさ(参加の入口を軽くする)
これらを改善することで、参加しやすい環境が整います。
相利評価表で協力を設計する
協力関係を具体的に設計するためには、「相利評価表」というツールが有効です。
関係者ごとに「困りごと」「目的」「活動」「役割」「相利」を整理し、相利が役割(コスト)を上回る状態をつくることがポイントです。
そうすれば、相手は「誰かのため」ではなく「自分のため」に参加するようになります。これが持続可能な協力関係の基盤になります。
おわりに
今回の講演では、「良いことをしているから協力してほしい」という発想から、「お互いの困りごとを一緒に解決する」という提案型の協力関係へ転換することの重要性をお伝えしました。
相利開発という考え方が、諫早市における社会福祉活動の担い手確保に少しでも役立てば幸いです。
より詳しく知りたい方は、拙著『協力のテクノロジー』や協創の道具箱の様々なコンテンツもぜひご活用ください。