
2025.10.06
ロジックチェーン
フレームワーク解説
目標達成への最短ルートを描く「ロジックチェーン」思考法
「チームでプロジェクトを進めているけど、なぜか一体感が生まれない…」
「協力者にもっとうまくプロジェクトの全体像を伝えたい…」
チームで何かを成し遂げようとするとき、こんな悩みを抱えたことはありませんか?メンバーそれぞれが自分のタスクに集中するあまり、プロジェクト全体の大きな流れを見失ってしまうことはよくあります。
そんな時、チームの羅針盤となるのが、今回ご紹介する「ロジックチェーン」という思考フレームワークです。
ロジックチェーンは、目標達成までの道のりを、誰にでも分かりやすく、論理的で直線的なステップとして描き出すためのツールです。これにより、チームメンバーや協力者全員が「今、自分たちはどこにいて、どこへ向かっているのか」を明確に共有できるようになります。
この記事では、チームの協力体制を劇的に改善する「ロジックチェーン」の作り方と、その活用法を分かりやすく解説します。
ロジックチェーンとは?協力のための「戦略地図」
ロジックチェーンは、一言で言えば「協力者が効果的に協力するための戦略地図」です。
複雑なプロジェクトも、4〜6ステップ程度のシンプルな一本道で表現するのが大きな特徴。これにより、関わる人全員がプロジェクトの全体像を俯瞰し、迷うことなく自分の役割を理解できます。
難しい分析ツールではなく、簡単なプロセス図と表で構成されるため、誰でもすぐに作成し、活用することができます。
明日から使える!ロジックチェーン作成の5つのポイント
では、具体的にどうやってロジックチェーンを作ればいいのでしょうか?ポイントは以下の5つです。
ポイント1:目標から逆算して作る(バックキャスティング)
まずは最終的に達成したい目標(ゴール)を明確に設定します。そして、「その目標を達成するためには、直前に何が必要か?」と、ゴールから現在に向かってステップを逆算して組み立てていきます。
ポイント2:最初から順番に確認する(フォアキャスティング)
バックキャスティングでステップを組み立てたら、今度はステップ1から順番に、「本当にこの手順で進めば、次のステップにつながるか?」を確認します。これにより、計画の現実味や無理がないかを検証できます。
ポイント3:ステップ間の「論理」をチェックする
各ステップのつながりが、単なる思いつきではなく、合理的な理由(論理)で結ばれているかを確認します。「Aが起これば、Bが起こる」という因果関係や、「Xのためには、Yという手段が必要だ」という目的手段関係など、ステップ間のつながりの根拠を明確にしましょう。
ポイント4:自分で管理可能かチェックする
描いたステップ全体を、自分(もしくは自分のチーム)が責任を持って管理(マネジメント)できるかをチェックします。他力本願な計画になっていないか、自分たちのコントロールが及ぶ範囲で計画が組まれているかを確認するのは非常に重要です。
ポイント5:とにかくシンプルに!
ロジックチェーンは、細かい作業手順書ではありません。協力者と大きな戦略の流れを共有するためのものです。枝分かれさせたり、情報を詰め込みすぎたりせず、誰が見ても直感的に理解できるシンプルさを心がけましょう。
具体例:NPO法はどうやって成立した?
ロジックチェーンの考え方を、1990年代後半の「NPO法立法運動」を例に見てみましょう。
最終目標:NPO法を成立させる
これを達成するために、当時の人々は次のようにバックキャスティングで戦略を立てました。
- (目標) NPO法成立のためには…
ステップ5:国会議員の過半数の賛成が必要だ。
- (ステップ5) 国会議員を動かすには…
ステップ4:世論の支持が不可欠だ。
- (ステップ4) 世論を動かすには…
ステップ3:多くの市民活動団体が声を上げることが必要だ。なたのプロジェクトの「協力の設計図」が完成します。
- (ステップ3) 多くの団体を巻き込むには…
ステップ2:リーダー的な団体に働きかけるのが効果的だ。
- (ステップ2) リーダーを動かすには…
ステップ1:まず自分たちの仲間を集め、運動の核を作ることが必要だ。
このように、壮大な目標も、達成可能なステップに分解することで、具体的な行動計画が見えてきます。
「ロジックモデル」との違いは?
似た言葉に「ロジックモデル」がありますが、両者には明確な違いがあります。
ロジックモデル: 主に活動が生み出す波及効果(インパクト)に焦点を当てます。
ロジックチェーン: 目標達成までのプロセス全体を自分たちで管理・実行することに焦点を当てます。
目標達成まで責任を持ってやり遂げるための計画が「ロジックチェーン」と覚えておきましょう。
まとめ
チームやプロジェクトの成功は、関わる人々の「協力」の質にかかっています。
今回ご紹介したロジックチェーンは、その協力を最大化するための強力な武器となります。目標達成への明確な道筋をチーム全員で共有し、一体感のあるプロジェクト運営を実現するために、ぜひこの「戦略地図」を描いてみてください。