協力のつくり方

2025.10.01

協力のつくり方


「もっと周りの人に協力してもらえたら、仕事がスムーズに進むのに…」
「良かれと思って提案しているのに、なぜか相手に響かない…」

ビジネスやプロジェクトにおいて、他者との「協力」は不可欠です。

しかし、この「協力」を単なる「お願い」や「頼み事」だと思っていると、相手を動かすことはできません。

本記事では、その核心的な内容をダイジェストでご紹介します。


私たちは日常的に、意識せず「交換」と「協力」という2つの異なる関係性を使い分けています。この違いを理解することが、協力の第一歩です。

「交換」のメカニズム:欲しいものを手に入れるための取引

講義ではまず、「交換」が生まれる仕組みを分かりやすく解説します。

交換とは?

  • 相手の欲しいもの(ニーズ・欲求)を提供し、自分の欲しいもの(対価・売上)を得る関係。

メカニズム(顧客のプロセス):

欲求:「お腹がすいた」

ニーズ:「カレーが食べたい」

③制約:「でも安く済ませたい」「自分で作るのは面倒」

④探索:「安くて美味しいカレー屋を探す」

⑤提案:(店の提示):「安くて美味しいカレーあります!」

⑥成立:顧客が代金を支払い、店はカレーを提供。顧客は満腹になり、店は売上を得る。

このように、企業活動の基本である「売買」は、顧客の「欲求→ニーズ→制約→探索」というプロセスを深く理解し、それに合致する提案をすることで成立します。これは、価値と対価を一致させる営みです。


一方、「協力」は全く異なるメカニズムで生まれます。

協力とは?

  • 相手が抱える「問題」を解決し、「目的」の実現を支援する提案のこと。

メカニズム(協力者のプロセス):

成立:共通の目的(相利)が見出され、共に目的実現へ向かう。

問題:「このままでは、大会に出られない…」

目的:「地区のサッカー大会に出て、みんなで楽しみたい!」

原因:「メンバーが1人足りない」

探索:「誰かメンバーになってくれる人はいないだろうか…」

提案(あなたからの働きかけ)

講義で紹介されるアマチュアサッカーチームの例は秀逸です。メンバーが足りないキャプテン(あなた)が、健康のために運動仲間を探しているAさんに「チームに入らないか?」と提案します。

これは、あなたの「大会に出たい」という目的と、Aさんの「仲間と楽しく運動を続けて健康になりたい」という目的が、「チームに参加する」という一つの提案によって同時に満たされる(相利)からこそ成立するのです。

“協力とは、提案だ。”

— 松原 《協力アカデミー 基礎スキルコース「協力の作り方」講義》

この言葉が示すように、協力とは一方的な「お願い」ではなく、相手の目的実現を支援し、かつ自分の目的も達成する、緻密に設計された「提案」なのです。


では、どうすればそんな「良い提案」が作れるのでしょうか?本講義では、そのための具体的な手順が示されています。

Step 1: 協力者を深く理解する(4つの要素)

最も重要なのは、相手を深く理解することです。以下の4つの要素を、対話を通じて明確にしましょう。

問題:相手は現状、何に困っているのか? 不満は何か?

目的:相手は本当はどうなりたいのか? 理想の状態は?

原因:なぜ、その目的が達成できないのか? 障壁は何か?

探索:その原因を解決するために、今どんな行動をしているか?

Step 2: 「原因」を直接解決する提案を設計する

相手を苦しめている「原因」を特定したら、それを直接的に取り除けるような提案を考えます。Aさんの例で言えば、「仲間がいない」という原因に対して、「チーム」という仲間を得られる場を提示しています。

Step 3: 「相利(Win-Win)」の原則を盛り込む

その提案が、相手の目的実現に貢献するだけでなく、自分自身の目的達成にも繋がることを明確にします。一方的な自己犠牲でも、相手への要求だけでもありません。「あなたの目的が達成されると、私の目的も達成される」という構造を設計することが重要です。

Step 4: 相手が「探索」しているタイミングで届ける

どんなに素晴らしい提案も、タイミングを間違えれば響きません。相手がまさに「どうしようか…」と解決策を探している(探索している)タイミングで声をかけることで、あなたの提案は「渡りに船」となるのです。


今回の講義『協力の作り方』は、「交換」と「協力」という明確なフレームワークを提示することで、私たちのコミュニケーションに大きな示唆を与えてくれます。

交換は、相手のニーズを満たし、対価を得る営み。

協力は、相手の目的実現を支援する提案

もし今、あなたが誰かの協力を得たいと悩んでいるなら、一度立ち止まって考えてみてください。

・相手が本当に実現したい目的は何か?

・その達成を阻んでいる原因は何か?

・その原因を解決し、お互いの目的を達成できる最高の提案(協力)は何か?

この視点を持つだけで、あなたの一方的な「お願い」は、相手にとっても魅力的で、共に未来を創る「Win-Winの提案」へと変わるはずです。

より詳しい解説や具体的な事例、協力者理解を深めるためのヒアリング技術に興味を持たれた方は、ぜひ本編の動画をご視聴ください。

前の記事へ